旧正月とはどんな日

明治以前の日本の正月は、現在の多くのアジア諸国と同様に、「旧正月」と呼ばれている陰暦の日付で行われていたようです。
明治政府の様々な都合での欧米に倣う「太陽暦」の導入には、かなりの無理があったようですが、なにはともあれ明治6年1月以降は新暦での1月1日が新年と定められました。
農業関係者からは多くの不満があったようですが、暦を販売する業者等を、『旧暦の大小暦の発行独占権』を契約金を納める形で押さえ、新暦変更に踏み切ったため、都市部では仕方なく従ったようです。

太陽暦・西暦の変更のみではなく、明治政府はそれまでの尺や里をメートル法に改めてもいますが、私の知るところでは、和服の仕立て・大工仕事など、職人の「和の仕事」には尺貫法はまだ使用されています。
それと同様に、日本でもいまだに昔の陰暦使用の「旧正月」は地域的には残っているようですが、日本全体で見た場合には、『正月』は太陽暦・西暦の1月1日で定着しています。
一般的な『正月』が定着したことで、明治以前の「正月の日付」は『旧正月』と呼ばれるようになったのでしょう。

最初こそ中国からの伝来だったのでしょうが、古来から存在した旧暦を使用する場合には、『旧盆』などの呼び名を用いるようです。
本来の旧暦は様々な方法から、日にちにかなりのズレが生じるようで非常にややこしいのですが、日付だけ新暦にあわせたご都合主義の方法で計算したため、1ヶ月遅れの行事が多くなっています。
「旧盆」などがその例ですが、簡単な解決法での行事はなんとなく慣例になっていて、旧暦の行事は1ヶ月遅れと思いがちです。

しかし、『旧正月』だけは、近隣の国をみても大幅に日にちが動いているようです。
頭だけの理解では、旧暦と呼ばれる太陰暦は、二十四節気の立春前後の新月の頃を1月1日としていること。
1年の長さが、12ヶ月354日から13ヶ月384日になるのだそうです。
当然旧暦の1月1日は、太陽暦・新暦とは一致しないのですから、毎年ずれてくる訳です。

1月22日から2月19日ごろまで、毎年移動するのだそうです。
頭で理解するよりも、長い間旧暦に馴染んできた国の習慣に倣えばよいことですし、日本でも旧暦の暦はありますから、調べることは出来ます。
ちなみに2014年の「旧正月1月1日」は、1月31日なので月遅れに近い日付になっています。

海外の旧正月

中国大陸、台湾、韓国、ベトナム、モンゴルでは、『旧正月』は最も重要な祝祭日のため、新暦の正月より盛大に祝っているようです。
もっともアジアと言っても時差はあるので、日本とベトナムでは日付が異なることもあり、モンゴルの場合では中国歴とは別のモンゴル歴のために、他のアジア諸国とは異なってもいるようです。

中国では、この「旧正月」を『春節』と一般的に呼んでいますが、新年・大年・農歴新年・元旦などともいわれています。
1911年の辛亥革命の翌年、「中華民国の成立」に合わせて太陽暦・新暦が採用となり、元旦は新暦の1月1日に移動しました。
日本と同様な大きな変更があったのですが、旧暦(農暦})の1月1日は「春節」と改名され、2013年はその百年記念だったようです。

春節に伴う民族の大移動は、「春運」などと呼ばれて日本でもニュースになりますから、旧暦の正月は名前が変わっても定着しているということでしょう。
旧暦の大晦日の夜のテレビ番組は、「春晩」とも呼ばれるそうですから、日本の大晦日のテレビと同じですね。
日本の中華街などでも「春節」を祝う行事は、爆竹もにぎやかに華やかに行われています。

「旧正月」が休日となっている国も多く、中国・韓国・北朝鮮・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・ブルネイ・モンゴル等。
休日が1日だけではなく、日本の正月同様に何日かにわたる国もあります。
中国本土は、旧暦の大晦日から7連休と長く、「春運」は当然の結果なのでしょう。
香港やマカオは新年の3日間、台湾は新年の5日間、韓国は大晦日から3日間、ベトナムも大晦日から4日間です。

日本とベトナム・モンゴル以外の国は、旧暦の計算法に「中国標準時」を使用するため、「旧正月」は常に同じになるそうです。
モンゴルでは、暦がラマ教の宗教行事などに使用されているもののため、宗教的な計算もあって、常に前年に発表されています。
我が家では、中国とモンゴルに知人がいるため、「年賀の挨拶状」のやり取りをしていますが、我が家の差出日は新暦の1月1日に、頂くのはそれぞれの新年に合わせて届きます。

世界各地で、西暦ではない新年を祝う所もいろいろありますが、アジア以外では「正教会」がそうです。
ロシア正教会、エルサレム総主教庁、グルジア正教会、セルビア正教会等で、1月14日を正月としているそうです。

その他の各国や宗教によっても、様々な正月の迎え方がありますが、面白いのがシンガポールとマレーシアです。
年4回も正月を祝うそうですが、それは4つの暦(ヒンズー・イスラム・旧暦・新暦)があるためのようで、忙しいことでしょう。
イランは春分の日が、タイでは太陽が白羊宮に入る4月13日が正月に当たるそうです。